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四十八

加藤典洋

四つの批評の力

 


●加藤典洋さんエッセイ
「四つの批評の力」

批評というのはさまざまな夢をもりこめる容器だと思う。

これまでも、さまざまな人が、ずいぶんと変わった夢をそこに盛ってきた。

わたしが批評に最初に見た夢は、「本を読まない」で「書く」ということだった。「ただ考える」ことで、どこまでいけるか。それをわたしは、単独登攀のラインホルト・メスナーに託して語ったことがある。「本を読む」、しかしそこで得たものをすべて捨てて「書く」。しかし批評は、むろん、「本を読む」ことでもある。はじめに、そのことがある。それから、それへの否定が生まれてくる。批評のうちには、「本を読みたい」という気持があり、「本を読みたくない」という気持があり、「何かを書きたい」という気持があり、「何も書きたくない」という気持がある。この四つの気持、それがわたしに批評を書かせてきた四つの動力だ。

今回上梓した本、『文学地図――大江と村上と二十年』(朝日新聞出版)には、これまで行った三回の文芸時評と、そこから考えた文が入っている。これを、一個のテーブルに見立て、そこに本を並べてみよう。これが今回の展示の考え方である。

テーブルには、四つの区画がある。一つ目は、緑色の区画で、村上、大江から保坂、阿部まで。現在のわたしの関心に沿う十三冊の本。二つ目は、緋色の区画で、近年の文芸時評で自分なりに発見できたと思う十七冊の若手、中堅の小説家の作品。三つ目は、灰色の区画で、いまわたしの関心のうちにあり、時評等にも扱った九冊の小説以外の批評、エッセイなど。そして最後が、黄色の区画で、そのうちのほとんどは時評には出てこなかったが、「書きたくない」というわたしの一番深い気持に見合う、いま手元にある、十冊(十タイトル)の外国の書き手の著作を、選んでいる。合計四十九タイトル。テーブルを一望しただけでは、何も出てこない。でも本とはそもそも、そういうものである。

【加藤典洋】


●加藤典洋さんプロフィール

加藤典洋さん(かとう・のりひろ)

1948年山形県生まれ。文芸評論家。85年『アメリカの影』(講談社/現在、講談社学術文庫)を刊行後、文芸評論家にとどまらず風景論、日本という共同体、戦後の精神史的な諸相をめぐって独自の批評を展開。 97年『言語表現法講義』(岩波書店)で新潮学芸賞、98年『敗戦後論』(97年講談社/現在、ちくま文庫)で伊藤整文学賞、04年『小説の未来』(朝日新聞出版)と『テクストから遠く離れて』(講談社)で桑原武夫学芸賞を受賞。主な著書に『太宰と井伏』(講談社)、『何でも僕に訊いてくれ』(筑摩書房)ほか。



●加藤典洋さん選書リスト
「緑色の区画」

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1.
海辺のカフカ

海辺のカフカ 上巻

村上春樹 / 新潮社
2005/03出版
ISBN : 9784101001548
486p 16cm
¥740(税込)
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2.
海辺のカフカ

海辺のカフカ 下巻

村上春樹 / 新潮社
2005/03出版
ISBN : 9784101001555
528p 16cm
¥780(税込)
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3.
中国行きのスロウ・ボ−ト

中国行きのスロウ・ボ−ト

村上春樹 / 中央公論新社
1997/04出版
ISBN : 9784122028401
288p 16cm
¥599(税込)
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村上春樹の最初の短編集で、原型的な作品が収められている。「ニューヨーク炭坑の悲劇」は、昔読んだきり、忘れていて、英訳の短編集に収められたのを機に再読したが、その奥行きに一驚を喫した。概して村上は短篇によいものが多いが、他の短篇もよい。村上の原点がここにある。
4.
日常生活の冒険

日常生活の冒険

大江健三郎 / 新潮社
2007/09出版
ISBN : 9784101126067
473p 15cm
¥660(税込)
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昔、大江健三郎も十分に軽薄で、読んで面白かった。わたしはこの小説を読んで、大江のファンになった。大昔、一九六三年、十五歳のとき。何しろこの本を雑誌連載、ついで、新刊で読んだのだ。作中主人公格の斎木犀吉のモデルになった伊丹十三はもういないが、小説の輝きは、いまも消えない。
5.
臈たしアナベル・リイ総毛立ちつ身まかりつ

臈たしアナベル・リイ総毛立ちつ身まかりつ

大江健三郎 / 新潮社
2007/11出版
ISBN : 9784103036197
218p 20cm
¥1,470(税込)
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6.
日本文学盛衰史

日本文学盛衰史

高橋源一郎 / 講談社
2004/06出版
ISBN : 9784062747813
660p 15cm
¥999(税込)
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7.
ニッポンの小説

ニッポンの小説 百年の孤独

高橋源一郎 / 文藝春秋
2007/01出版
ISBN : 9784163686103
451p 20cm
¥2,349(税込)
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8.
カンバセイション・ピ−ス

カンバセイション・ピ−ス

保坂和志 / 新潮社
2006/04出版
ISBN : 9784101449241
498p 15cm
¥700(税込)
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9.
小説の自由

小説の自由

保坂和志 / 新潮社
2005/06出版
ISBN : 9784103982050
360p 20cm
¥1,785(税込)
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10.
血の味

血の味

沢木耕太郎 / 新潮社
2003/03出版
ISBN : 9784101235141
300p 16cm
¥499(税込)
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11.
無名

無名

沢木耕太郎 / 幻冬舎
2006/08出版
ISBN : 9784344408289
309p 15cm
¥559(税込)
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小説『血の味』を同じ作者のノンフィクション作品『無名』とともに読むこと。すると、二つの作品の間に、もう一つのやがて来るべき小説の像が浮かんでくる。少なくともわたしは、この二つの作品を読んで、何かを書かなければならない、と思った。
12.
シンセミア

シンセミア

阿部和重 / 朝日新聞出版
2006/10出版
ISBN : 9784022643773
274p 15cm
¥525(税込)
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ポストモダン思想からインターネット世界へと動いた書き手として、阿部和重と東浩紀がいる。両者はこの後、別れる。この小説が何を実現したのかはまだよくわかっていないが、何を「そぎ落とした」のかは、はっきりしている。近代小説の核心だった、主人公の単一性。今後ますます、この作品の「そぎ落とし」の意味がはっきりしてくるだろう。
13.
シンセミア

シンセミア

阿部和重 / 朝日新聞出版
2006/10出版
ISBN : 9784022643780
293p 15cm
¥525(税込)
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14.
シンセミア

シンセミア

阿部和重 / 朝日新聞出版
2006/11出版
ISBN : 9784022643797
289p 15cm
¥525(税込)
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15.
シンセミア

シンセミア

阿部和重 / 朝日新聞出版
2006/11出版
ISBN : 9784022643803
294p 15cm
¥525(税込)
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16.
光の指で触れよ

光の指で触れよ

池澤夏樹 / 中央公論新社
2008/01出版
ISBN : 9784120038686
521p 20cm
¥2,310(税込)
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17.
ダンシング・ヴァニティ

ダンシング・ヴァニティ

筒井康隆 / 新潮社
2008/01出版
ISBN : 9784103145295
272p 20cm
¥1,470(税込)
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